サザンを好きになって、もう15年くらいになる。サザン自体が私より年上なので、どうあがいてもデビュー当時からのファンにはなれないのだけど、初めて車の中で「女呼んでもんで抱いていい気持ち〜♪」を聞いた日から今日まで、私が好きなミュージシャンはいつでもサザンオールスターズだ。当時はまだ小学生だったし、当時流行っていたサザンの曲も「エロティカセブン」だったので、サザンが好きといっても奇異の目でしか見られなかった。それは中学に入ってからも変わらず、私の同世代にファンが急増する「TSUNAMI」現象までそんな状態だった。もちろんお金なんてなかったので、図書館でこつこつとCDを借りてテープにダビングし、夜眠る時と朝目覚まし代わりに毎日聞いていた。当時は年越しライブもWOWOWではなくTBSで、「しじみのお味噌汁」の途中で放送時間枠が終了してしまって、悲しみに暮れながら年を越した覚えがある。自分がいつからファンクラブに入っているのか、いつからライブに行きだしたのか覚えていないけど、気付いたら毎年のライブを心待ちにするようになった。高校生になった頃からは、一つのツアーに2度3度と参加するようになり、大学生の頃はぴあの店頭に徹夜で並んでばかりだった。気付いたら、サザンライブと桑田ソロライブのために、北は北海道から南は福岡まで行っていた。数年前に渡米してからもそれは変わらず、仕事をしてなかったときはライブの度に、仕事をしていたときも休みとタイミングを合わせてはライブのために帰国した。
どのライブだったか忘れたけど、大森が脱退し毛ガニがお休みし、最後ステージで手をつないだメンバーが4人になった時、ライブの余韻よりもただ寂しさでいっぱいになった。そしてこれもいつの頃からだったか覚えてないけれど、桑田さん、しんどいのかもって思うようになった。「キラーストリート」が出た時、これで解散するんじゃないかという噂があった。それもあり得るんだろうなぁと思った。今のサザンファンはサザンに新しさを求めてくれない。やってくれるねっていう、ソロの「東京」みたいな曲を出さなくても、エロくて夏っぽくて、あるいはバラードであれば売れてしまう。それはそれでお決まりなりに楽しいのだ。新曲の振り付けを覚えてライブで皆で踊る。でも桑田さんにとって、それはある意味手抜きというか、自分の限界に挑戦することとは対局にあることで、だからこそこのままではいけないっていう葛藤があったんんだろうと思う。
私がサザンがこれ以上変わらないのは無理だろうと感じたのは、2007年の桑田ソロツアー「呼び捨てでも構いません!!」を見たときだ。そもそもこのツアーに向けて出された「明日晴れるかな」と「風の詩を聴かせて」を聞いたときに、ん???とは思ったのだ。なんでこんななんとなくバラードな当たりも外れもしないような2曲がシングルなのだと。噂ではアミューズがお金ないからCMとか映画のタイアップばかりやらなくちゃいけないっていうのも聞いたけど、そうだとしてももうちょっと桑田ソロじゃないと出来ない曲とかないのかなぁって、偉そうだけど1ファンとして思ったのだ。そしていざ初日の福岡に合わせて帰国したのだけど、初日ってこともあってか会場のせいなのか分からないけど、終始斎藤誠さんのギターチューニングがずれたままで、感動的なはずの「白い恋人達」の間奏部分でさえも聞いてられない程だった。ピアノとギターの音がずれているのだもの。そして初めて、アンコールを聞かずに帰った。さらに後日横浜アリーナのアンコールで、ソロとしては初めてサザンの「希望の轍」をやったと聞いて、あ〜って、そういうことかぁって、なんだか分かった気がしたのだ。今のサザンのままでは、桑田さんは思う存分ソロ活動をすることも出来ないんだろうって。だからきっと、そろそろサザンは変わらなくちゃいけないんだろうって。
そんなわけで、サザン無期限活動休止のニュースをアメリカで聞いて、ショックはショックだけど、仕方ないよねっていうのが正直なところだった。真夏の大感謝祭の最終日、大雨の中で桑田さんは「この夏が終わってしまうのが寂しい気もしますが、これでやっと終われるのかなっていう気持ちもあります」と言った。ドキュメントの中では、ファンからの「30周年おめでとう!」の掛け声の後には「一分でも一秒でも早くこの場から出たかった」とも。居心地が悪いから、嫌だから活動休止するわけじゃない。なんか別れ際の恋人みたいだと思った。嫌いになって別れる人なんてそんなにいない。ずっと一緒にいたんだし、過ごした時間が長い分、楽しい思い出も人一倍持ってる。だけど、お互いが前に進むためには離れるしかない。
あの日から何度目の夏が来ただろう
出会ったり別れたりくりかえし
美しい思い出も大切だけど
人生はこれからを夢見ることさ
大好きな曲を、もう生で聞けないと思うと寂しい。サザンで〜すという彼らに会えないのが寂しい。新曲だツアーだと騒げないのが寂しい。だけど、サザンにとって必要な、前向きな休業だったのだから、ファンとしては「ありがとう、お疲れさま」と言って見送ることしか出来ないように思う。いつの日か、サザンの曲を楽しく演奏できる日が来たら、是非復活してください。もし来なくても、自分の音楽を楽しんでください。私も音楽とともに人生楽しみます。