小学校の国語の教科書に脳の記憶の話があって、
それは記憶はお互いにシナプスでつながっているんだというような内容だったと思う。
そして思い出せそうで出せないのはシナプスが弱っているからだと。
そのまま思い出さないと切れてしまうけど、思い出せればそこがより強くつながれると。
小学生用の内容だったので色々簡略化された内容だったんだとは思うけど、近頃本当にそうだなとおもう。
アメリカに住んでいた10歳の頃、ここでのことは絶対忘れないと思っていた。
中学高校のときにも、これだけ充実した生活のことを忘れるわけがないと思っていた。
だけど時間がたつと記憶は薄れるものだ。
当たり前に言えた名前が出てこなくなって、ふと記憶の隙間にはっきりしないものがあることに気付く。
そしてその事自体、思い出さなくなってしまう。
それは今アクティブな記憶とその出来事とのつながりが遠すぎてしまうから。
そしてひょんなことから離れたところの記憶が蘇ると、
その一つの出来事から芋づる式にいろんな記憶の断片が呼び起こされる。
そのまわりにつながっている様々な記憶。
全てが断片的で、それ以上の詳細を思い出すすべもない。
それでもそのときの感情が、時空を飛び越えてこの胸を満たす。
言葉には到底できないような自分の心の状態を、脳は覚えているのだろうか。
忘れることが出来なければ、生きていることは辛すぎるという。
それでも忘れたくない思い出が、誰にでもあるものだ。
そんなとびきりの思い出でも、全てを刻み込むことは出来ない。
大好きだったEugeneの街並を忘れてしまうように。
大好きだった学校のディティールを忘れてしまうように。
そうやってふいに呼び起こされた記憶が新しい思い出の物語を作り出す。
今度は自分の思い通りに、好きなところだけをうまくつなぎ合わせて。
そうやって今日も、思い出を作り出す。